コーチングって、受けても意味ないんじゃないか。気になってはいるのに、そう思って踏み出せずにいる方もいるんですよね。

仕事はこなせている。けれど、このままの延長線上でいいのかは分からない。そんなときにコーチングを勧められたり、案内を見かけたりする。一方で、「意味ない」「時代遅れ」という声も耳に入ってくる。

疑うのは当然です。お金も時間もかかることですから。

私は長くコンサルティングをやってきて、9年間で2,000人以上の事業相談に携わってきました。いまはコーチングでもお役に立ちたいと思っています。そういう立場ですが、「意味ない」という声にはうなずけるところがあります。そこは、ごまかしません。

意味が出るかどうかは、手法の良し悪しより、コーチにできることとご自分の進み方が噛み合っているかにかかっているんですよ。

コーチングが「意味ない」と言われる5つの理由

コーチングが意味ないと言われる5つの理由:話して終わる、変えてもらえる期待、効果が見えにくい、進め方の幅、進み方とのずれ

コーチングが意味ないと言われるとき、挙がる理由はだいたい決まっています。

言われる理由中身
話して、気づいて、終わる答えを教えない進め方なので、1回ごとに何が変わったかが見えにくい
受ければ変えてもらえると思っていた動くのは本人で、コーチが代わりに動くことはできない
効果が数字で見えにくい形が残らないので、受けた本人も確かめにくい
コーチによって進め方の幅が大きい同じ「コーチング」でも中身が違い、比べる基準がない
進め方が自分に合っていない行き先を先に決めたい人もいれば、動きながら見つけたい人もいる

どれも、言われるだけの事情があるんですよね。

コーチングがつまらないと感じるのは、話すだけで終わって見えるから

つまらないと感じる方がいるのは事実です。コーチングは答えを教えない進め方なので、ご本人が動き出すまでは「話しただけ」に見えやすくなります。

セミナーなら、持ち帰る資料があります。コンサルティングなら、提案書が残ります。コーチングで手元に残るのは、ご自分の言葉だけです。

1回ごとに何が変わったのかも、数字では確かめられません。それで「つまらない」「意味がない」と感じるのは、無理もないことです。

「受ければ変わる」と思っていると、意味がないと感じやすい

コーチングを受ければ、何かを変えてもらえる。そう期待して始めると、がっかりしやすくなります。

受ける側の心構えが足りない、ということではありません。そもそもコーチは、ご本人の代わりに動けない仕事なんです。

コーチが一緒にできるのは、考えを整理して向かう方向を言葉にすることと、試した結果を振り返ること。その間の一歩は、ご本人にしか踏み出せません。

コーチングを受けても変わらなかったのは、努力不足とは限らない

すでにコーチングを受けて、変わらなかった方もいると思います。自分の努力が足りなかったと感じたかもしれません。あるいは、コーチが悪かったと思ったかもしれない。

私は、どちらとも言い切れないと考えています。同じ「コーチング」という名前でも、進め方はコーチによってかなり違います。その進め方が、ご自分の進み方と合っていたかどうか。

変わらなかった理由を振り返るとき、ここは見落とされやすいんですよ。

コーチングは時代遅れと言われても、役割は残っています

気づいて終わる形と、対話・行動・振り返りがつながる形の比較

時代遅れと言われる理由には、当たっている部分があります。ただ、当たっているのはコーチングという手法全体ではなく、気づいたところで終わる形のほうだと思います。

時代遅れ・日本では流行らないと言われる背景

いまは、答えを調べればすぐに手に入ります。AIに聞けば、それらしい答えも返ってくる。そんな時代に、答えを教えずに問いかけて待つことの価値は、伝わりにくくなりました。

実際、気づきを得たところで終わってしまうコーチングもあると思います。気づきは大事です。ただ、気づいただけでは何も動かないんですよね。

日本では流行らない、という声もあります。ただ、流行らない理由をはっきり示した調査は、私が調べた範囲では見当たりませんでした。だから、理由は言い切れません。言えるのは、気づいて終わる形のままでは、受けた人にも変化が見えにくいということまでです。

対話が行動と振り返りにつながっているか

答えを教えてもらうだけなら、たしかにほかの手段があります。けれど、自分のことは自分では見えにくいものです。何を選びたいのか。どこでつまずいているのか。

問いを立てて一緒に考え、ご本人が「ああ、そういうことか」と腑に落ちる瞬間まで付き合う。決めたことを実際に試して、次の回で結果を振り返る。対話がこうして行動と振り返りにつながっているなら、コーチングの役割はいまも残っていると私は考えています。

コーチングの効果と欠点、変えられることと変えられないこと

コーチングで変えられること(方向を言葉に・選択肢に気づく・考えを整理)と変えられないこと(動く力・代わりに行動・心の回復)

コーチングで変えられることと、変えられないことがあります。

コーチングで変えられることコーチングでは変えられないこと
向かう方向を言葉にする動く力そのもの
見えていなかった選択肢に気づくご本人の代わりに行動すること
自分の考えを整理する心の傷を回復させること

「意味がない」と感じる場面は、右の列をコーチングに期待したときに起きやすいんです。

コーチングの効果について、言えること・言えないこと

効果を調べた研究はあります。たとえば、組織で働く人を対象にした17の研究をまとめた分析です。そこではスキルと気持ちの面と仕事の成果に、コーチングの効果が見られたと報告されています(Jonesほか、2016年)。

ただ、研究の数が比較的少ないので結果の読み方には注意が要ると、著者自身が書いています。対象の多くは管理職の方でした。

それに、これは多くの人をまとめて見たときの傾向です。一人ひとりが受けて変わるかどうかまでは、この研究からは言えません。

受けた本人にとっても、効果は確かめにくいものです。だから受ける前に、「何が変われば、受けた意味があったと言えるか」を決めておくことをおすすめします。たとえば、次のようなことです。

  • 次の一歩を自分で決められるようになる
  • 迷ったときに立ち返る基準ができる
  • 決めたことを試して、振り返れるようになる

何も決めずに始めると、半年後に「変わった気もするし、変わっていない気もする」となりやすいんですよ。

コーチングの欠点は、動く力までは作れないこと

コーチングの大きな欠点は、動く力そのものは作れないことです。コーチが一緒に決められるのは、向かう方向まで。動く力は、ご本人にしか出せないと私は考えています。

私にも、思い違いをしていた時期があります。当時は、お客さんに手をかけ目をかけることが個別対応だと思っていました。毎朝、一人ひとりのために文章を書いて送っていたんです。

そんなとき、知り合いのコンサルタントにこう言われました。「個別対応というのは、毎日そうやって何でも送って差し上げることではありません。ときには何も送らない、何も言ってあげない。そういうことをしてあげるのも、個別対応だったりするんですよ」

その瞬間、はっとしました。言って差し上げることも大事だけれど、言って差し上げないことも大事なんです。

結局のところ、自分の頭で考えて、行動して、失敗したり成功したり。そういう体験が人を成長させます。

そうやって関わったクライアントは、時に自分の足でつまずいて、転んで、怪我をすることもあります。怪我をしたときに、手を差し伸べればいい。

ほかにも欠点はあります。続けるには時間とお金がかかりますし、すぐには変わりません。同じ名前でも進め方の幅が大きく、受けてみるまで中身が分かりにくいところもあります。これは受ける側ではなく、コーチングという仕事の側が抱えている弱さです。

それと、心の回復が必要なときに頼るのは、コーチングではなくカウンセリングです。どちらが上ということではなく、担う役割が違います。

コーチングに意味が出る人と、出ない人を分けるもの

本人の進み方とコーチの関わり方が噛み合うか、ずれるか

コーチングは相性が大事だと、よく言われます。私もそう思います。そのうえで、ご本人の進み方とコーチの関わり方のずれも大きいと考えています。

相性だけでは説明しきれないこと

同じコーチに、同じ進め方で関わってもらっても、動ける人と動けない人がいます。

相性は、コーチの人柄や話し方として語られることが多いですよね。ただ、同じコーチでも結果が分かれることを考えると、相性だけでなく、受ける側の進み方も関わっているように思います。

人の進み方には、アート型とデザイン型の2つの傾向がある

アート型は衝動・直感から動きながら行き先を見つける波乗り、デザイン型は目的から逆算する登山

アート型は、衝動や違和感や直感から動き出し、動きながら行き先を見つける進み方です。デザイン型は、目的や計画から動き、行き先から手順を逆算する進み方です。

アート型デザイン型
動き出す起点衝動・違和感・直感目的・課題・計画
進み方動きながら行き先を見つける行き先から手順を並べる
たとえると波乗り登山

どちらが優れているという話ではありません。誰の中にも両方があって、比率が違うだけなんです。同じ人でも、時期や場面によって比率は変わります。

型について詳しくは、アート型/デザイン型の考え方にまとめています。

進み方と関わり方がずれると、意味がないと感じやすい

この比率を知らないまま頑張ると、自分に合わない進み方を選び続けることになります。それで「努力が足りない」と思ってしまう。努力の量ではなく、進み方の問題だったりするんですよ。

コーチングの場でも、同じことが起きます。ご自分の進み方をコーチと共有できていないと、どこか噛み合わないまま回を重ねてしまう。どちらの能力の問題でもなく、噛み合っていないだけです。

だから、自分の型を知ることがコーチングの入口になります。どちらに寄っているかが分かっていれば、最初の面談で「自分はこう動くほうが進みやすい」と伝えられます。どう関わってもらうかを、コーチと相談しやすくなるんです。

一度受けて意味がなかったという方も、ご自分のせいではなく、噛み合っていなかっただけかもしれません。

まとめ

自分の進み方を知り、合う関わり方を選び、動くのは自分

コーチングが意味ないと言われるのには、それなりの事情があります。時代遅れと言われる部分にも、当たっているところがあります。

それでも、手法そのものに意味がないわけではありません。動く力を出せるのは、ご自分だけ。そのうえで、自分の進み方を知って、それに合う関わり方をコーチと選べるかどうか。分かれ目はそこにあるんです。

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診断は、自分を知るための入口です。優劣や、変わらない性格を示すものではありません。

コーチングを受けるかどうかは、そのあとで決めていただいて構いません。受けないと決めるのも、ひとつの選択です。