周りに合わせてばかりで、自分軸がない気がする。ふとそう思って、立ち止まることがあります。
会議では、場の空気を見て意見を引っ込める。頼まれた仕事は、断らずに引き受ける。それなのに、家に帰ってから「あのとき、本当は何と言いたかったのか」が思い出せない。
自分軸がないと感じるのは、あなたに力がないからとは限りません。自分を測る「眼鏡」のほうが、合っていないことがあるんですよ。
自分軸は、持っているか持っていないかの話ではなく、自分の中の比率の話だと思うんですよね。
自分軸とは?衝動や違和感から動く軸
「もっと自分軸を持ったほうがいいよ」と言われて、どきっとしたことはないでしょうか。
一般には、自分の感覚や価値観を基準にして選ぶことだと言われます。私は、そのなかでもアート型の軸を自分軸と呼んでいます。

- アート型は、理由が後から付いてくる
- 自分軸はわがままとは違う
アート型は、理由が後から付いてくる
たとえば、条件のいい話を断ったとします。理屈では説明がつかない。ただ、どこか引っかかる。
アート型というのは、こういう衝動・違和感・直感から動く人のことです。理由は後から付いてきます。「なぜそうしたのか」と聞かれても、本人にもうまく言葉にできません。けれど、選択は外していない。動いた後で振り返って、「ああ、そういうことだったのか」と腑に落ちるんです。
進み方でいえば、動きながら行き先を見つけていく形です。たとえるなら波乗りですね。自分の内側から湧いてくる感覚を起点にして選ぶこと。これが、私の考える自分軸です。
私は、コーチングとコンサルティングの境界を設けず、9年間で2,000人以上の事業相談に携わってきました。事業を始めて20年目になります。アート型とデザイン型は、その中で整理してきた見方です。
詳しい考え方は、アート型とデザイン型の解説にもまとめています。
自分軸はわがままとは違う
自分の違和感を優先して断ったとき、相手の顔が浮かんで後ろめたくなることがあります。自分軸で選ぶと、わがままだと思われるのではないか。そう心配する方もいます。
ただ、自分軸は周りを無視することではありません。私の見方では、自分軸の中身はこだわりです。何を大事にしたいかの起点が、自分の感覚にあるというだけなんですよ。
芯にあるこだわりを拠り所にして選ぶことは、わがままとは呼びません。
自分軸と他人軸の違い。私が言う「相手軸」は他人軸ではありません
自分軸を調べていると、他人軸という言葉も一緒に出てきます。どこが違うのかが、いちばん分かりにくいと思うんですよね。
世間でいう他人軸は、周りの評価や顔色に振り回される状態を指すことが多いようです。上司の機嫌を見てから予定を決める。誰にどう思われるかが、選ぶ理由のいちばん上に来る。そんな状態です。
私が言う「相手軸」は、それとは別のものです。目的や相手から逆算して動く力のことで、デザイン型の軸にあたります。

私は、自分軸と相手軸を次のように整理しています。
| 見る点 | 自分軸(アート型) | 相手軸(デザイン型) |
|---|---|---|
| 動き出す起点 | 衝動・違和感・直感 | 目的・課題・計画 |
| 進み方 | 動きながら行き先を見つける(順算) | 行き先から手順を並べる(逆算) |
| たとえるなら | 波乗り | 登山 |
どちらが優れているという話ではありません。世の中は、アート型が新しい何かを生み出し、デザイン型がそれを社会に届く形に翻訳することで前に進んできました。両方が必要だから、ここまで来ているんですよね。
- 相手軸は、思いやりから逆算する力
- 自分軸と相手軸は、誰の中にも両方ある
相手軸は、思いやりから逆算する力
デザイン型は、構造化・計画・逆算で動く人のことです。ゴールから逆算して、必要な順序を並べます。たとえるなら登山の進み方です。
初めて会う人に提案をするときを考えてみてください。相手が何に困っているかを先に考えて、話す順番を組み立てる。相手軸の中身は、この思いやりです。
周りに振り回される他人軸と、相手の状況を見て手順を組み立てる相手軸。この2つは、根本から違うものなんです。
自分軸と相手軸は、誰の中にも両方ある

人は、アート型かデザイン型かで振り分けられるものではありません。誰の中にも両方があって、比率が違うだけなんです。
同じ人でも、年代や事業の段階によって比率は変わります。仕事と私生活で、違う顔が出ることもあります。
どちらも、一人の中に同居している大切な進み方です。
自分軸で生きる人の特徴と、他人軸になってしまう理由
自分軸が弱く見えるのは、自分を測る道具のほうが、デザイン型でできていることが多いからです。
- 自分軸で動く人に表れやすいこと
- 他人軸になるのは、眼鏡がデザイン型だから
自分軸で動く人に表れやすいこと
自分軸の傾向が強い方は、計画を立てるより先に動いてしまいます。選んだ理由を聞かれてもすぐには答えられず、後から言葉になる。理屈で説明がつかないのに、違和感があるからと断ることもあります。
ところが、デザイン型の眼鏡で自分を見ると、こう読めてしまいます。
- 計画を立てるのが苦手
- 振り返りの型が回せない
- 目標を決めると、息苦しくなる
- 自分の強みが、ふわっとしている
そして、その感覚を弱点だと受け取ってしまいます。
けれど、計画を立てるのが苦手なのは、弱点ではありません。計画を立てなくても動ける力を持っているということなんです。
結果を出している方と話していると、「なぜ自分はうまくいっているのか、自分でも言葉にできない」という声をよく聞きます。頭が悪いわけではありません。アート型の力で動いているからです。
行き先そのものが言葉にならないときも、焦らなくて大丈夫です。行き先は、動いた後で見つかることもあります。そこは、やりたいことがわからないときの記事で詳しく書いています。
他人軸になるのは、眼鏡がデザイン型だから

自己分析の本を開くと、まず目標を決めましょう、と書いてあります。決めようとすると息苦しくなる。それは、自分のせいではないかもしれません。
世にある自己分析の道具のほとんどは、デザイン型を前提に組まれています。つまり、デザイン型の眼鏡で世界を見ているんですよ。その眼鏡でアート型の自分を測ろうとすれば、輪郭がぼやけるのは当たり前です。
世の中で語られる成功法則も、多くはデザイン型の戦い方です。本来アート型の方がそれをやり続けると、「頑張っているのに、なぜかしっくりこない」が積み上がっていきます。
自分の強みが見えなくなって、周りの正解に合わせにいく。私は、これが他人軸に見えてしまう正体だと考えています。
ただ、この話が当てはまらない方もいます。計画や逆算が得意なのに、周りに合わせすぎていると感じる方の理由までは、眼鏡の話では説明できません。そういうときは、場面ごとに自分の進み方を振り返ってみてください。
自分軸を作るには。比率を知って、両方を育てる

大事なことは、2つあります。
- 自分の中の比率を知ること
- 両方を育てること
まず自分の比率を知る
周りの期待と自分の感覚がぶつかったとき、普段の自分はどう決めているでしょうか。仕事と私生活で、次の3つを振り返ってみてください。
- 仕事で何かを決めるとき、「情報を集めて論理的に判断する」か、「最終的には感覚で決める」か
- 仕事の行動指針が、「何をやるか」を先に決める形か、「何はやらないか」を先に決める形か
- 私生活の好きなものは、「機能や効果」で選ぶことが多いか、「なんか好き」という感覚で選ぶことが多いか
この問いは、自分の進み方を振り返るためのものです。周りの期待と自分の感覚のどちらを優先するかは、決めてくれません。
自分がどちらに寄っているかを確かめたくなったら、無料のタイプ診断を試してみてください。仕事とプライベートを分けて答える全22問で、登録なし、約3分です。
この診断で分かるのは、その時点の回答から見える傾向です。優劣や変わらない性格、向いている仕事を示すものではありません。
相手軸を捨てずに、両方を育てる
比率が分かったら、相手軸を切り捨てるのではなく、両方を育てていきます。
アート寄りの方がデザインを学ぶと、伸び方が変わるんですよね。逆もまた同じです。弱いほうを切り捨てずに、両方を持っている前提で、自分の中で対話させていきます。
アート型がデザイン型になろうとしなくていい。デザイン型がアート型になろうとしなくていいんです。それぞれが、自分の役割を全うすればいいと思っています。
周りの期待と自分の感覚の間で迷ったときは、自分の中にあるこだわりと、相手への思いやりの両方に耳を傾けてみてください。
私のコーチングは、導く力です。答えを持ってきて渡す仕事ではありません。
答えはもう、ご自分の中にあります。ただ、自分では見えていないだけなんですよ。
まとめ

誰の中にも自分軸と相手軸があり、違うのは比率だけです。まず自分の比率を知って、相手軸を切り捨てずに、両方を育てていきます。
「自分が見えない」のは、あなたに力がないからではありません。眼鏡を、間違えているだけなんです。
自分の比率を確かめたくなったら、無料の診断を試してみてください。もちろん、診断を受けずに、普段の決め方をノートに書き出してみるだけでも十分です。



